猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)とは?原因・症状・治療法を徹底解説
猫を飼っている人にとって、最も恐れられる病気の一つが**FIP(猫伝染性腹膜炎)**です。かつては「不治の病」とされていましたが、近年では治療の可能性も広がってきています。
本記事では、FIPの原因や症状、診断方法、最新の治療法について詳しく解説します。大切な愛猫を守るために、FIPについて正しい知識を身につけましょう。
1. 猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)とは?
FIP(Feline Infectious Peritonitis:猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルス(FCoV)が突然変異して発症する病気です。この病気は猫にとって致命的であり、特に若い猫や免疫力が低下した猫が発症しやすいとされています。
FIPは進行が早く、適切な治療をしなければほとんどの猫が数週間から数カ月で命を落としてしまいます。しかし、近年では有効な治療法が開発され、生存率が大幅に向上しています。
2. FIPの原因と感染経路
FIPの直接的な原因は、「猫コロナウイルス(FCoV)」の変異です。猫コロナウイルスは、多くの猫が保有しているウイルスですが、通常は無害で軽い下痢を引き起こす程度です。しかし、何らかの要因でウイルスが変異すると、FIPを発症してしまいます。
FIPを引き起こす主な要因
- ストレス(環境の変化、多頭飼育、引っ越しなど)
- 免疫力の低下(病気や栄養不足)
- 遺伝的要因(一部の猫種では発症リスクが高いとされる)
感染経路
猫コロナウイルス(FCoV)は、主に糞便を介して感染します。ウイルスが猫の口や鼻から入り、消化管に感染することで広がります。多頭飼育環境では感染が拡大しやすいため、トイレの管理が重要になります。
3. FIPの症状と種類
FIPには、大きく分けて**ウェットタイプ(滲出型)とドライタイプ(非滲出型)**の2種類があります。
ウェットタイプ(滲出型 FIP)
このタイプは、腹水や胸水が溜まるのが特徴です。進行が早く、治療をしなければ数週間以内に致命的になります。
主な症状
- お腹が膨れる(腹水の貯留)
- 呼吸困難(胸水が溜まる場合)
- 食欲不振、体重減少
- 発熱(抗生物質が効かない持続的な発熱)
ドライタイプ(非滲出型 FIP)
ウェットタイプとは異なり、腹水や胸水は見られませんが、体のさまざまな臓器に炎症を引き起こします。
主な症状
- 神経症状(歩行困難、けいれん、目の揺れ)
- 黄疸(歯茎や皮膚が黄色くなる)
- 目の異常(虹彩の色の変化、ぶどう膜炎)
- 腎臓や肝臓の異常
4. FIPの診断方法
FIPの診断は難しく、確定診断が困難なことが多いです。以下の検査を組み合わせて、総合的に判断します。
① 血液検査
- 白血球の増加
- 貧血
- 総タンパクの上昇
② 腹水・胸水の検査
ウェットタイプの場合、黄色く粘り気のある腹水や胸水が特徴です。
③ PCR検査
FIPを引き起こす変異ウイルスがあるかどうかを調べる検査です。
5. FIPの治療法
かつてはFIPの治療法が確立されておらず、対症療法しかありませんでした。しかし、最近では新しい治療薬の登場により、多くの猫が回復できるようになっています。
① 抗ウイルス薬(GS-441524)
近年、GS-441524(Remdesivirの類似化合物)がFIPの治療に有効であることが分かっています。この薬は日本では未承認ですが、海外では実際に使用されており、**生存率が80~90%**と非常に高い治療法です。
② Molnupiravir(モルヌピラビル)
モルヌピラビルは、新型コロナウイルスの治療薬として開発されたものですが、FIPの治療にも効果があると報告されています。獣医師の指導のもと、投与されるケースがあります。
③ ステロイド・免疫抑制剤(対症療法)
FIPの進行を遅らせるために、ステロイドや免疫抑制剤を使用することもあります。ただし、根本的な治療ではありません。
6. FIPの予防方法
FIPの発症を100%防ぐことは難しいですが、以下の点に注意することでリスクを減らせます。
✅ 多頭飼育の場合は衛生管理を徹底する
- トイレをこまめに掃除し、ウイルスの感染を防ぐ
- 新しい猫を迎える際は健康チェックを行う
✅ ストレスを軽減する
- 環境の変化を最小限にし、猫がリラックスできる空間を作る
- バランスの良い食事と適度な運動を心がける
✅ 定期的な健康診断を受ける
- 早期発見・早期治療が重要
- 体調の変化に気をつけ、気になる症状があればすぐに病院へ
まとめ
FIPは、猫にとって非常に怖い病気ですが、近年ではGS-441524やモルヌピラビルといった治療薬によって、多くの猫が回復できるようになりました。
発症すると進行が早いため、早期発見・早期治療が重要です。普段から愛猫の健康状態をチェックし、異変を感じたらすぐに動物病院を受診しましょう。
FIPの正しい知識を持ち、愛猫の健康を守るためにできることを実践していきましょう!